シンプルで機能美溢れるシザーケースをレザークラフトしよう

今回はレザークラフト企画です。

シザーケースとは？

美容師さんやトリマーさんが命とも言えるハサミ（やコーム）を収納し肩や腰に下げて施術を行うあのケースです。

（シャルロッティ）Charlottey シザーケース 美容師 トリマー 5丁 シザーバッグ ベルト付 プロ仕様 (カーキ)
KK(三四郎市場) 本格手作り 高級本革仕様 シザーケース ６丁 (本革ベルト、コーヒー色)

値段もピンキリで形状も様々ですがPUレザーのものは安い傾向にあり本革のものは高い傾向にあるようです。

そしてどうやら一部もしくは全部が開いて内部の清掃ができるタイプと出来ないタイプがあるらしい。

今回は依頼者（美容師さん）から実際に使う人目線の意見を聞きながらcraftsmanらしいシザーケースを製作したいと思います。

craftsmanのシザーケース仕様

1. 本革であること。
   PUレザーでは水で濡れたハサミを収納していたら加水分解でボロボロになってしまうんじゃないかな？ハサミを何回も抜き差ししても平気な丈夫さは本革に担保してもらいます。
2. 清掃ができる。
   髪の毛が付いたハサミなのでこれはマスト。逆に開けられないやつはどうしてるんだろう・・・内部環境地獄じゃないか？
3. 軽い。
   毎日腰や肩に下げて使うものなので重いものはNG。これは部品の構成をなるべくシンプルに少なくし、金物の点数を減らし、さらには余計な装飾を施さずとも満足できる外観を目指すことで実現します。
4. ハサミはループ状のホルダーで受け、ハサミの先端はケースの底に当たらない設計。
   ケースによってはここが弱点で長く使っていくうちに穴が空いてしまったり、レザーの粉がハサミに付くようになってしまったりするようなので留意します。

製作編／作り方

上の仕様を満たすべく考えに考えた結果、型紙は何と2点のみになりました。

ベルト類は型紙なんかいらないのでその場その場で作っていますがそれにしてもシザーケース史上最少点数なんじゃないかなこれ？なんて妄想が進みます。

大判の端革（1,000円位だったかな？）に部品を写しました。
メインのパーツは裏表張り合わせて手縫いします。
ハサミホルダーは1枚をループして作りますので今回は4本仕様になります。

別たちで革を裁断しましょう。ポイントはこれから行う”曲げ貼り”のために曲げた時外側になる方は数センチのマージンを取ることですね。（写真を参考にしてみてください。）
※型紙は曲げの内側に来る方の寸法になっています。

曲げ貼りした後先ほど取った外側のマージンを内側に合わせて切り取ると菱目打ち機の出番です。

曲げ貼りはその名の通り仕上がりの形状に曲げた状態で二枚の革を貼り合わせてしまう技法です。
写真では革の一部に皺が寄っていますがこれは曲がった形状のものを伸ばして菱目打ち機にかけているためですが、逆にこれを平らに貼ってしまうと仕上がった状態で皺が寄ることになってしまいます。（それを避けるための曲げ貼り）

メインパーツの全周を手縫いした後はハサミホルダーの取り付けです。ループ状に貼り合わせた後ハサミが底付きしない且つ取り出ししやすい位置に貼り付けます。（こういうのは現物合わせがいいです。）

菱目打ち機で穴を空けて手縫いします。当たり前のようですが貼り付けて縫ってと、こちら側から仕上げていかないと製作不能に陥ります。

ハサミホルダー4本分の手縫い終了！
ハサミ同士が中で当たらないための配慮としてハサミホルダーは少し長めに設計しました。

この後お好みでクリップ用のベルトを取り付けたり腰ベルト自体も製作したい人には仕事が残っていますが、基本的には次の完成編の写真を参考に腰ベルト用のDカンを取り付け、ジャンパーボタン4対を取り付ければ完成です。これも完成の形を整えながら良い所に現物合わせで取り付けると良いでしょう。

※Dカンの取り付けには大カシメを使います。

シンプルで機能美溢れるシザーケースの完成

一枚のレザーを折りたたむことでポケットが2個出来ます。
この気づきにより部品点数を大幅に減らすことができ大きく軽量化できました。

背面の4つのジャンパーボタンを外すと・・・・

パカっ！

パカっ！！と全開に開くので簡単に清掃ができ、清潔な状態を保てます。

こういう仕事の道具はやっぱり道具が入って完成形ですよね。

余った端革と手芸用PPテープを使ってベルトも製作しました。腰ベルトにもショルダーベルトにもなる仕様です。

依頼主（うちの奥さん）にもとても喜んでもらったので後はビールを飲むだけです。