今回の企画はcraftsman発ではなく建設業を営む親戚からの一本の電話から始まりました。
「クレーン車のバッテリー、また上がったわ」
2トンワイドのいすゞエルフに、タダノのカーゴクレーンを架装した業務車両。稼働頻度が低い時期が続くと、24Vの大容量バッテリーはじわじわと自然放電していき、いざ現場に出動というタイミングでうんともすんとも言わないということが何度かあって困っているそうです。
とりあえずの対処として、24V/12V両対応の大自工業製メルテック全自動パルス充電器「MP-330」の利用をすすめ、トリクル充電しておくことを提案。バッテリー上がりの不安は解消されるはずでした。
ところが、いざ使ってみると、地味に面倒な作業が発生します。

- バッテリーカバーの蝶ナットを2つ外し、カバーを外す(一番のストレス)
- 充電器のワニ口クリップを奥まったところにあるバッテリー端子にプラス・マイナスに気をつけて挟む(プチストレス)
- 出動の際は逆の作業を行う
彼の言葉をそのまま借りれば
「この儀式を簡単にする方法をなんとか考えてくれ!」
です。
ワニグチクリップを切ってコネクター化する(=保証が切れる)という案を秒で却下されてしまったところでCraftsmanが考えたトリクル充電の”儀式”を終わらせるワンタッチ充電ハブの仕様に進みます。
Craftsmanのトリクル充電ワンタッチ充電ハブ/仕様
- 充電器側は無加工。純正クリップそのまま使えるので保証も切れない
- 車体側も配線の追加のみで無加工。コネクターブラケットはバッテリーカバー固定用の蝶ナットに共締め
- バッテリーカバーを外すことなく、コネクターの抜き差しだけで充電が完結
- プラス・マイナスの誤接続を防ぐ設計(色分け+左右非対称形状で、暗い場所でも手探りで判別可能)
- ワニ口クリップでもしっかり挟める、太さを確保した専用端子(ステンレス製M10ボルト利用)+不慮の脱落を防ぐロック機構
- ショート防止カバー付き
- 車体側配線には40Aヒューズを設置。恒久配線区間を独立して保護
- コネクターはメーカー標準の抜き差し実績があるアンダーソン規格(SB50相当)を採用
- 他のメルテック機種や同形状クリップの充電器にも流用可能
大分もりもりになっていますが、ポイントはフォークリフトやキャンピングカー、船舶まで世界的に使われ続けているアンダーソンコネクタを利用したことと、ワニ口クリップからの変換ハブの作り込みにあります。
Craftsmanのトリクル充電ワンタッチ充電ハブ/設計・製作編

Fusion 360で設計したシステム実現のためのパーツがこれ。
樹脂部分の材質はABSでボルトはM10x50mmのステンレス製。これがワニ口クリップのターミナルになります。
ワニ口クリップのロックとショート防止を兼ねたカバーが設計の肝です。突き出たボルト(ナット)にも樹脂カバーを付けることで露出部分を極力なくしました。

3Dプリンターで印刷し仮組したところ。
ここで改めて今回のシステム実現のために必要なものをリストアップします。(充電器は除きます)
- M10×50mmボルト(ステンレス)2本
- M10ナット(ステンレス)4個
- M10平ワッシャー(ステンレス)4個
- アンダーソンコネクター(SB50相当、50A対応)1個
- 5.5sqケーブル(赤・黒) 長さは適宜
- 防水インラインヒューズホルダー(40A)1個
- 丸形(O型)圧着端子 R5.5-10(M10穴、ターミナルブロック側)2個
- 裸圧着スリーブ(突き合せ用)B-5.5 2個
- 熱収縮チューブ(スリーブ絶縁・防水用)適量

まずはターミナルブロック側から作っていきます。
O型圧着端子を取り付けたケーブルをターミナルブロックに取り付けましょう。
この時平ワッシャー2枚で端子を挟み込むようにすると良いと思います。

車体側に向かうアンダーソンコネクターを加工します。(人によってすごく拘りの出る部分らしく迂闊な説明で炎上したくないので加工方法は自分で調べてください)

車体側のプラスのラインには40Aのヒューズを入れましょう。(MP-330の場合。お使いの充電器の最大電流に合わせてください。)

忘れない内に反対側の六角ボルト頭の嵌め込み穴にショート防止キャップを嵌めます。

車体側ケーブルの取り付け。
この車の場合は後ろに向けて出すのが正解。

バッテリーカバーを取り付け右側の蝶ナットでアンダーソンコネクターを組み込んだブラケットを共締めにします。
次にバッテリーカバーを外すのはバッテリー交換の時だよ。良かったねー。

充電器側。
ワニ口クリップを挟み込んで、ロック兼ショート防止カバーを入れてナットを締めます。
※カバーがターミナルブロック(ベースパーツ)に先に接触する寸法になっています。ワニ口クリップの取り付け位置は十分低くしてナットは締めすぎないようにしてください。

セルフタップ穴になっているトップキャップをねじ込めば、純正状態に復帰可能な不用意に外れることのないショート防止カバー付きハブの完成です。

上手く配線が加工されていれば配線部もショート防止になっています。

充電時はこのマッドカバーを外し・・・・

充電器から伸びているアンダーソンコネクターを接続すればMP-330はフルオートなので30秒後には自動で充電が始まります。
出動時は充電器の停止スイッチを押してアンダーソンコネクターを抜くだけです。(マッドカバーを付けるのを忘れずに)

充電中の全景。

無事100%充電されトリクル充電に移行したMP-330。
いかがですか?・・・・少なくとももう儀式だなんて言わせませんよ。
え、毎回充電するならそれはそれで儀式だって?
おまけのコーナー
私Craftsmanが今回の企画『トリクル充電の”儀式”を卒業しよう/キャンピングカーから建設重機まで…ワンタッチ充電ハブの開発』で製作した全てのパーツのstlデータを公開しちゃいます。
今回作ったのはいすゞエルフ向けですが、仕組み自体は車種を選びません。ガレージで出番を待つ旧車や、シーズンオフのバイクから、キャンピングカーのサブバッテリー、フォークリフト、除雪車、農機、船舶の始動用バッテリーなど、「トリクル充電を簡略化したい」という悩みがあるなら、アンダーソンコネクタ取り付けブラケットの変更だけで応用できるはずです。
公開ファイル:quick_connect_charging_hub.zip
以下の5種類のSTLファイルを同梱しています。
-
terminal-block.stl
ターミナルブロック(ベースパーツ) -
t-guard-bolt.stl
M10ボルト先端ショート防止カバー(2個印刷) -
t-guard-bottom.stl
ターミナルブロック裏面のM10ボルト頭のショート防止カバー(2個印刷) -
t-guard-lock.stl
ターミナルに挟んだワニ口クリップのロック兼ショート防止カバー(2個印刷) -
anderson-bkt.stl
いすゞエルフ用バッテリーカバー上のアンダーソンコネクタ取り付けブラケット(蝶ネジ共締め)
※私はABSフィラメントを使いCuraで100.7%に拡大して印刷しています。外殻を10層位にすることで十分な強度が出ます。
※この記事を読んで使い方が分かる方が対象です。(ノーサポートですが誰でも分かる記事を心がけましたので是非チャレンジしてください)
※商用利用は不可、ダウンロードは一世代のみで再配布は固く禁じます。
※再配布や商用利用を見つけた際には法的手続きを取ることがあります。
同じデータをnote・BASE両方で販売しています。どちらで購入いただいても中身は同一です。お好きな方からどうぞ。