上の企画でホイールをノッチレス化した私のM575ですが、以前よりMX ERGO SにあってM575にはない機能に憧れがありました。
マウス自体に傾斜をつけて使用するあの機構です。
これ自体は0度と20度を行ったり来たりするだけでどちらかしか使えないようです。マウス本体底面がV字形状になっていて真ん中に支点となる溝がありそれぞれの端にマグネット・・・・なかなか面白い機構です。
M575でも傾斜をつけたい人は実は結構いるようでサードパーティ製では傾斜のある台を作って販売しているものがあります。自分の好みの傾斜スタンドを選ぶことでMX ERGOより多くの角度に対応することができるようです。
これは何となく力技で解決しているようにも思えますが、ある角度を購入した人が、やっぱり違う角度を購入し直してみたりという例があるように販売形態としてはとても優れているんじゃないかなと思います。
ただね・・・私は色々な角度で使いたいのよ。そんなかさばるスタンドをゴロゴロ並べておくスペースなんてないし。ということで今回の企画は・・・・『M575用の無段階調整可能な傾斜スタンドを設計して3Dプリンターで印刷して使っちゃおう』になります。
Craftsmanの作るM575用無段階傾斜スタンドの仕様
仕様行きます。
- 取り付け方がスマートであること・・・・取り外しも簡単で、無改造(もとに戻せる)
- 一個のスタンドで0度から28度まで無段階で角度の調整ができる
- 工具なしで調整ができること・・・・組立時も特殊工具なしでドライバー一本あれば良い
- 清掃が楽であること・・・・スタンドを取り外すのも一瞬だが、なんならスタンドを外さなくてもボールが外れるようにする
- 軽量であること・・・・持ち運びのためというよりかは使用中に手首を固定しすぎるのが嫌。ちょっとずらしたい時に本体ごとストレスなく動く。
- かといってボタンを押した時にぐらついたりしない絶妙なバランス
「こんなものできるのか」ですって?出来るんです。だって出来たもの見ながら仕様書いているんですから。(お前いつもこれな)
M575用無段階傾斜スタンド設計製作編
それではいつもの様にFusion 360でモデリングした完成版をお披露目します。(ドン!!)
お分かりいただけただろうか・・・・完璧にトレースされた電池カバーに。
これはもうFusionに挿入した写真(キャンバス)の上に実物をノギスで測りながら描いたものです。リブから電池押さえの突起、取り付けの機構まで丸パク・・・もとい、完璧なトレースです。(カバーを無くした人用に提供できるレベル)
それに肉抜きされたフレームが結合されたものが別部品のスライドベースをガイドに動く設計です。フレームの肉抜き形状は軽量化だけでなく電池カバーの取り外しを楽にすることにも一役買っています。
何年かぶりにGIFアニメーションを作ったのでどうぞ。
0度から28度まで無段階で調整可能な仕様はこうして実現されました。ちなみに28度はMX ERGOは20度なのでそれ以上ということと(0度の時は純正電池カバーに交換すれば良いとしても)弱い角度でもスライドガイドが邪魔にならない範囲を検討した結果決まりました。
実はポイントは右側面にあったりします。直線上に回転の支点となる部分があり、ここがデスクにピタッと乗ることで安定させています。(普通左側で受けようとするよね?でもそれじゃ角度がない時親指に当たっちゃうんだよね。)
あと、細かい話ですがデスクに当たるのはこの部分でマウス本体は接触しないので傷ついたりする心配もありません。
3Dプリンターで印刷します。ABSで出力するときにはいつも100.7%に拡大しています。
Curaのおすすめ設定のままだとサポートが左端に一本しかつかずそこに行き着く前に垂れてガタガタな表面になってしまったのでサポートブロックを真ん中に追加したところ形状が安定しました。
ドライバー一本での初期組み立て(完成後は工具いらず)を実現するために雌ネジになる所(ノブとフレーム)はセルフタップ形状になっています。
- ノブ用のM4x12mmナベコネジをフレーム側のセルフタップ穴にドライバーでねじ込んでタップ穴を作ります
- ノブを組み立てるためにノブのセルフタップ穴に先程のM4x12mmナベコネジを最後までねじ込んでいきます(ノブボルトの完成)
- 組み立てたら、マウスの電池カバーと交換する形で装着します
完成した無段階傾斜スタンド・・・・その重量は実に14.0gです。ロードバイク乗りの方は全く関係ないのに無駄にテンションが上ってしまったことでしょう。
0度の時でもボールの掃除が出来るようになっていますが・・・・
そもそも一瞬でアッセブリーが外れるのでその穴が必要だったのかは・・・いや、やめましょう、だって軽量化と樹脂の節約にはなっているじゃないですか。
0度の時の状態
この状態でもボタン操作にガイドが邪魔にならない位置関係・・・よっぽど指が太い人は知らんけど・・・じゃなくて、この時はスタンドは不要なのよ。
MX ERGOの20度は多分この辺で再現してます。
フレームを敢えて動くように作っていますのでマウスに手を乗せるとグッと5mm程度沈みそこで安定します。(これが気持ちいい)
何となくそこの位置が気持ち悪くなってきたら(疲れてきたら)無意識に手首をスっと動かすとマウスが付いてくる・・・そしてまた違う筋肉を使う・・・最高やん。
マックス28度。
これも28度・・・・結構立ってますよね。
浅い角度の時ガイドが残っても良いならまだまだ角度が付けられますが実用的にはこんなもんじゃないでしょうか?
恐らくこれよりも角度を付けていくとボタンを押す方向が水平方向のベクトルに近くなっていくので重くしたり滑り止めを付けたりしなくてはならなくなってきます。(コンセプトからはズレてしまいます。)
もちろんこの状態ではストレスなく操作できています。
持ち主は見ないであろう角度。メカニカルで格好良い。
おまけのコーナー
私Craftsmanが今回の企画で製作した『M575用無段階傾斜スタンド』のstlデータを公開しちゃいます。
リンク先には今回の記事にある無段階傾斜スタンドを組み立てるのに必要な構成部品の全ての他に無駄に(無駄ではない)力を入れてトレースしてしまった電池カバー(本当に電池カバーだけ)のstlデータも一緒になっています。
どういうわけか電池カバーを紛失してしまった人(このスタンドを使っている人が危ない)がいるのかどうかは分かりませんが、なぜかメーカーからは普通には供給されていないそうなので一助になれば幸いです。
※所謂”それそのもの”ではないし私が設計したものですので車のアフターパーツの様なものだと理解してください。(馬力は上がりませんが)
この記事を読んで必要なボルトや組み立て方が分かる方が対象です。(ノーサポートです。)
ダウンロードは1世代のみ(その人のみ)で商用利用不可です。※再配布禁止です。
さらに、3Dプリンターなんか持ってないよって人のためにはDMM.makeで完成品を注文できるようにしました。
私の家庭用プリンターよりはるかに性能の良い工業用の3Dプリンターで製作されたものがお手元に届きます。
こちらに関しても私が製作したものとは物性が異なりますので、材質を何で出力するかは最終的にはご自身で選んでいただきます。
(全く駄目そうなものとコスパ悪そうなものは外してあります。こちらもノーサポートですが誰でも分かるような記事に仕上げたつもりですので是非チャレンジしてみてください。)
※電池カバー単品はあまりに瓜二つなのでこちらで出品するのは憚られました。あしからず。